2000年、まだアートコートギャラリーが別の名前の画廊だった頃に、ここの壁で展示した作品が《Looking up Leaves》です。要するに、木を見上げるように作品を見上げてもらおうとしました。天井が高い、ここの空間ならではの作品です。普通、絵というのは、だいたい145cmの高さを展示のセンターとするのが美術館基準ですが、私の場合はもっと高くして、絵を見るというよりは空の木を見上げる高さに展示してみたのです。つまり、視線の動きと一緒に作品があって、道を歩いていて街路樹を見上げるときの感覚です。歩きながらその風景に触れる感覚を呼び起こしたいという思いで描いています。
《open the air》というグループ展の出品作品。ふっと頭に浮かんだのが、養魚池。アオコで濁った池の中で赤い金魚が泳いでいる様を思い浮かべました。大和郡山に行ったら出会えるかもと思って、どこにあるかも調べずにとりあえず行ってみました。そこには、堤防に囲まれた田んぼのような池があって、本当にきれいなアオコの水の中で赤い金魚や出目金が群れを成して泳いでいました。緑の水の中に赤い絵の具が滲み出てくるように、金魚が水面近くにふうっと現れてきます。「やっぱこれ絵になるよな」、しかも、それは水面なので角度を変えると空が映りこんできます。絵画の要素が全部入っている、そういった感覚で金魚を描きました。