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美術館にアートを贈る会   お問合せは info@art-okuru.org
田中恒子さん児玉靖枝さん
第2回インタビューは当会発起人のお一人で、現在理事長の佐野吉彦さんにお話をうかがいました。
アートとの関わりの形はいろいろ。
見て楽しいだけではなく、ある種、生々しさが加わるとより面白い!
Q. 八木さんとはどのようにして知り合われたのですか?
A. あるアーティストとの出会いからです。たまたま飲み屋で隣に座ったアーティストが「今度大阪のギャラリーで展覧会をやるんですよ」と話すので「じゃあ行ってみようかな」となりました。ギャラリーの名前は知っていたんですが、なかなか行くきっかけがなくて、、、。そのアーティストは、バルセロナのリュイス・サンスと言って、奥さんが大阪人なので大阪弁をしゃべる変な外国人。彼と飲んだのはもちろん日本の飲み屋ですけどね(笑)。
Q. そこからなぜ美術館にアートを贈る会に参加しようと思われたのですか?
A. その前に、なぜ飲み屋かと言うと、すべて理屈はあとで付いてきて、最初は人間と人間の呼吸がうまく合うかどうかで始まるから。それは仕事でも何でもいっしょ。結果的としてひきずりこまれたところが自分のテーマと合っている世界であれば、はまっていく。美術館にアートを贈る会もそんな感じでしたね。
また田中恒子さんや篠雅廣さんというたいへん魅力的なキャラクターの人たちとも出会って、私にとってはいい学校のようなところです。
Q. 佐野さんはアートがお好きなのですか?
A. そうですね。アート自体に興味があります。私は建築の人間ですから、美術の方はある意味責任がないんですね。好きで楽しむだけ。もともと取手アートプロジェクトとか、アートにかかわるプロジェクトのバックアップをしたりしています。それは地域の人たちとアートの関わりとか、社会とアートとの関わりというのが面白そうだから。実はそれも飲み屋がきっかけでして(笑)。
Q. この会の面白みはどこにありますか?
A. 私は美術の世界については部外者。ところが寄贈プロジェクトの場合、5000円というお金を払うことでその輪に参加できます。展覧会のチケットを買うだけだったら、美術を見てああ楽しかったで終わりですが、お金を払うことである種の生々しさが発生します。美術というのはお金で買われるのか、美術館というのはいい絵だから手に入れようとするのか、とか、現実的な経済のなかで動いていることを体感できます。実は5000円というお金を出すことによって、美術をめぐる経済に巻き込まれるというか、大事な活動に手を染めてしまった(笑)みたいなところがすごく面白いなと思います。
Q. 今の活動について感じることはありますか?
A. 本当を言うと、もっとどんどんいろいろ同時に寄贈企画を進めていくともっと面白いし、勢いが出てくるんだろうけど、無理をしないでやっているのがいいなと思います。これを推進してこれで儲かるものでもなんでもないので、そういう意味では身の丈にあったことをしていくというのが一番いいんだろうなと思います。
Q. これから期待することはありますか?
A. こんなことを言うと一笑に付されるので、一笑に付していただいていいですが(笑)。会員自身でわがままな企画ができたら面白いのではないでしょうか。訪問して美術を選択するというのは加担はしていますが、ある意味受身。逆に、そんなに面白がっていたりけなすんだったら自分たちで企画展をやってみるのも面白いなと思って。ま、素人企画がぞろぞろ出てきてもよくなくて、素人でも頑張っちゃったらできちゃった。そんな甘いことになってはいけない。そのへんはある種高いところを目指すようなところでやらなくてはいけないと思いますが。
Q. 大事なことは何ですか?
A. プロセスを大事にしていかなくてはいけない。中にはプロセスが乱暴でも結果としてはうまくいくようなプロジェクトもありますが、これはそうではない。あるアートを美術館に贈って展示されても、そこには贈る会からと書いてくれるわけでないので(笑)。そういう意味では甲斐があるようなないような。甲斐がないけど満足しているのが大事かな。
Q. 満足が甲斐かもしれませんね。
A. それぞれが違う思いで参加しているから、立ち飲みのバーみたいな、異なる視点の出会いの場としても面白いですね。予定調和的に美術大好き何十年ではなくて、美術に関する取材をしてきた新聞記者やコレクターからすると別の見方があって、異なる視点が交わる場ですね。だからといって人の言うことに影響されないところの面白さ。影響してないけど、お互いの異なる視点を知る、今風に言うと多様さが発現する場ですね。予定調和でないところも大事かもしれません。先が見えないというのは、次の一手を打ちつつ考える柔軟さがありますね。なんか面白そうだからとのぞいてみたら、全然違う議論をしているけど、それはそれで面白いなとなったりして。冒頭の飲み屋の話ではないけれど、何が入り口になるかわかりませんからね。

2009年3月15日 安井建築設計事務所にて
佐野吉彦 プロフィール
建築家。大阪を代表する設計事務所のひとつ、安井建築設計事務所の代表。
建築を通じて、哲学や出会いを語る「建築から学ぶこと」を連載しておられます。
取材後の感想
佐野さんは建築ではプロ中のプロ。しかし美術では門外漢と何度もおっしゃって、逆にそれがゆえに楽しんでおられる様子が伺えました。この活動が、お金という現実的な形でアートと関わっていくリアリティな部分と感性の部分の両面を兼ね備えた活動であることを改めて感じました。ポジティブシンキングなエネルギーが深く静かに漂う佐野さん、これからもよろしくお願いします。手に持っておられるのは、昨年購入された写真作品です。「不思議な写真でしょ。好きなんですよ」とにこにこ。アートは人を笑顔にするんですね。 (インタビュアー 奥村恵美子)
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